2017年 06月 09日
トスカからのウエスト・サイド・ストーリー
クレールウインドオーケストラ第20回記念定期演奏会
曲目紹介に代えて その5
―前回は、姫様の素晴らしい諜報能力について触れられていました。侍従どのの色々な作品が気になるところですが…それでは、どうぞ!
「5曲目は…“とすか”じゃな。」
「左様ですな。トスカは伊太利亜を舞台にしたオペラでございます。」
「おお、歌劇のことじゃな。それで、どのような内容なのじゃ。」
「あるところに、歌姫とその恋人である画家がおりました。画家の方が、そこに逃げ込んできた友人を匿うことになるのです。その友人を追うどこぞのお偉いさんが、画家を拷問にかけて居場所を探ろうとする、と。」
「ほう。それは大変じゃな。」
「恋人の歌姫にしてみればたまったものではありません。ついには画家の友人の居場所を白状してしまいます。しかし、欲にまみれたお偉いさんは、画家を解放する代わりに自分のものになれと歌姫に迫り、その返り討ちに遭ってしまう、と。」
「いつの世にもどうしようもない男はいるものだな。歌姫のなかなか勇ましいことよ。」
「ところが、見せ掛けで終わるはずの処刑が画家に対して本当に行われてしまい、追い詰められた歌姫は身投げをしてしまう…といった何とも悲劇的な話でございます。」
「うぬぬ。女子である妾としては身につまされるものがあるのう。何やら不安になってきたぞ…。」
「姫様の身にそのようなことが起きぬよう、某がお守りいたします。」
「おお、達よ。…よろしく頼むぞ。」
「承知しました、姫様。」
―何やら盛り上がっていますが、そろそろ終了の時間になります。
「しまった、肝心の曲について話をしておらぬではないか。これでは、父上に叱られてしまう…。」
「おそらく大丈夫でしょう、我が殿のことですから。“ウエスト・サイド・ストーリー”については、いつものように遊び人の振りをしながら宣伝して回っておられるかと。」
―それでは、姫様と侍従どのによるお話を、これにて終了いたします。本日は、ありがとうございました。
2017年 06月 09日
インテルメッツォ
曲目紹介に代えて その4
―前回は、文化というものの一面について触れられていました。今回は、どのような話となるのでしょうか。それでは、どうぞ!
「4曲目は…いんてる…?」
「“インテルメッツォ”ですな。音楽で使う言葉で、間奏曲という意味でございます。」
「うぬぬ、異国の言葉はどうも発音が難しいのう。」
「某もそう思います。しかし、曲を作ったり文章を書いたりするのはもっと難しいようで。」
「ほう。そういうものなのか。」
「ある人は…作品とは往々にして作る途中で別の方向に一人歩きしてしまうものだ。駄作を書こうと思っているものなど一人もいないはずなのに…と苦悩を語ったと言われております。」
「そうか。そういえば、お主も色々と書いているようではないか。」
「姫様…なぜそれを。」
「妾の情報網を甘く見るな。まあ、おかげで妾の活躍が後の世でも語られそうではあるがの。」
「恐れ入りました、姫様。それでは、次に参りましょう。」
2017年 06月 09日
シネマ・シメリック
曲目紹介に代えて その3
―前回は、侍従どのの意外な一面が見られる話でした。今回は、どのような話が出るのでしょうか。それでは、どうぞ!
「3曲目は…しねま・しめりっく?」
「“シネマ・シメリック”ですな。仏蘭西の言葉で、空想の映画といったような意味合いを持つようでございます。」
「おお、活動写真のことじゃな。この地ではあまり広まってはおらぬが…。」
「文化ができてゆくのには、長い時間がかかります。その上、平和な世の中でなければすぐに廃れてしまいます。」
「そうじゃな。まあ、我が父上の治世ならば大丈夫であろう。」
「後は、民の懐が豊かでなければ。今日の飯も食えぬとあっては、文化どころではありませぬ。」
「安心せよ、我が藩の財には余裕がある。それに、妾の目が黒い内はその財を捨てるような真似はさせぬ。」
「確かに姫様は財政を掌握しており、またそれを活かすことに長じておられます。しかし、この曲からはどうも波乱の空気を感じてなりませぬ…。」
「達よ、お主は心配性じゃな。最も、どのような時でも油断は禁物じゃ。」
「左様ですな、姫様。それでは、次に参りましょう。」
2017年 06月 09日
呪文と踊り
曲目紹介に代えて その2
―前回は乙女心が垣間見られる素敵なやりとりでした。その調子で行きましょう。それでは、どうぞ!
「2曲目は、“呪文と踊り”じゃな。」
「はい。これは異国の儀式の風景を描いた曲と言われております。」
「妾の身の回りであれば、密教かあるいは念仏といったところかのう。」
「ところで九麗流の地では、築城や寺院などの建立の際には何か行わないのですか。」
「確かに地鎮の儀を行うが、あまり派手な舞を奉納したりはせぬ。」
「左様ですか。かの地では、儀式の際にいけにえを捧げる場合もあるようでございます。」
「なかなか物騒じゃな。わが藩では、人柱などの風習はとっくに廃止しておる。」
「承知しております。それにわが殿は築城の達人でございます。」
「うむ。後は…そうじゃ、祭りの際は皆で踊ったりもするのう。」
「姫様の舞は大層美しゅうございます。」
「そう褒めるな。それにしても…この前の達の舞は傑作であったのう。」
「…姫様、それはどうか早々にお忘れください。それでは、次に参りましょう。」